チーズ売り場で「ゴルゴンゾーラ」と書かれた商品を見て、「ブルーチーズとは何が違うのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか。見た目が似ている青カビチーズとの違いも曖昧で、独特の味や香りを想像してしまい、初心者には少しハードルが高いと感じるかもしれません。
この記事では、ゴルゴンゾーラとブルーチーズの違いという基本的な疑問から、ロックフォールやスティルトンといった他の代表的な種類との比較、さらに臭くないチーズの選び方まで、専門的な知識をわかりやすく解説します。
また、甘口のドルチェと辛口のピカンテの違いを理解すれば、あなたの好みや気分にぴったりのチーズが見つかるはずです。そのまま食べるのはもちろん、定番のはちみつとの組み合わせや、家庭で楽しめる簡単レシピなど、美味しい食べ方もご紹介します。この記事を読めば、もうチーズ選びで迷うことはありません。
- ゴルゴンゾーラとブルーチーズの基本的な関係性がわかる
- 世界三大ブルーチーズそれぞれの特徴が比較できる
- 味の好みで選べるドルチェとピカンテの違いが明確になる
- 初心者でも失敗しない選び方と美味しい食べ方が身につく
1からわかる|ゴルゴンゾーラとブルーチーズの違い
まずは基本|青カビチーズとの違いとは?

「ゴルゴンゾーラとブルーチーズの違い」を正確に理解するためには、まずチーズ全体の中での位置づけを知ることが近道です。チーズは製造方法によって大きく分類されますが、ゴルゴンゾーラは「ナチュラルチーズ」の中の「青カビタイプ(ブルーチーズ)」に属する、特定のチーズの固有名詞です。
一方で「ブルーチーズ」は、青カビを使って熟成させるチーズの総称であり、カテゴリ名にあたります。したがって、「すべてのゴルゴンゾーラはブルーチーズである」は正しく、「すべてのブルーチーズがゴルゴンゾーラである」は誤りとなります。これは、「すべての秋田犬は犬である」が、「すべての犬が秋田犬ではない」のと同じ関係性です。また、「青カビチーズ」はブルーチーズの日本語訳であり、これらは基本的に同じものを指します。
ブルーチーズの起源は、一説には古代ローマ時代まで遡るとも言われ、洞窟で熟成させていたチーズに、洞窟内に自然に存在していた青カビ(Penicillium roquefortiなど)が偶然付着し、その風味の良さが発見されたのが始まりとされています。
現代の製造工程では、チーズの組織内部に青カビを均一に繁殖させるため、「穿孔(せんこう)」と呼ばれる、長い針でチーズに穴を開ける作業が行われます。この穴が空気の通り道となり、酸素を好む青カビが美しい大理石のような模様を描きながら成長していくのです。この青カビが持つ酵素が、チーズの主成分であるたんぱく質や脂肪をゆっくりと分解し、アミノ酸や脂肪酸といった旨み成分を生成することで、ブルーチーズ特有のシャープな塩味と複雑で濃厚な風味が生まれます。
その中でもゴルゴンゾーラは、イタリアの特定地域で、厳格な規定に則って作られたものだけが名乗ることを許される、歴史と伝統のあるチーズなのです。
参考資料:Consorzio per la Tutela del Formaggio Gorgonzola DOP
代表的な種類|ロックフォール スティルトン

ゴルゴンゾーラは、フランスの「ロックフォール」、イギリスの「スティルトン」と並び、その品質と歴史的背景から「世界三大ブルーチーズ」と称される、まさに代表格の存在です。これら三者は、同じブルーチーズというカテゴリにありながら、その国の文化や風土を反映し、それぞれに全く異なる個性を持っています。
その違いを生み出す最も大きな要因が「原料乳」と、その品質を守るための厳格な「保護制度」です。
| チーズの種類 | ゴルゴンゾーラ | ロックフォール | スティルトン |
| 主な生産国 | イタリア | フランス | イギリス |
| 原料乳 | 牛乳 | 羊乳 | 牛乳 |
| 特徴的な風味 | クリーミーでマイルドなものから、シャープで刺激的なものまで幅広い | 羊乳由来の濃厚なコクと、ピリッとしたシャープな塩味、しっかりとした組織 | ナッツのような香ばしい風味と、複雑で豊かな味わい、やや硬めの組織 |
| 保護制度 | D.O.P. | A.O.P. | P.D.O. |
これらの保護制度(D.O.P.、A.O.P.、P.D.O.)は、いずれも欧州連合(EU)が定める「原産地呼称保護制度」の一種です。これは、特定の地域で、定められた伝統的な製法を用いて作られた農産物および食品にのみ、その名称を表示することを許可する制度であり、消費者にとっては高品質の証、生産者にとってはブランド価値を守るための重要な仕組みとなっています。
ロックフォール
羊の乳(羊乳)から作られるロックフォールは、三大ブルーチーズの中で最もシャープで力強い風味を持つと言われています。羊乳は牛乳に比べて脂肪分やたんぱく質の含有率が高いため、非常に濃厚でバターのようなコクが生まれます。そのリッチな味わいと、青カビのピリッとした刺激、そしてしっかりとした塩味が渾然一体となり、一度食べたら忘れられないほどの強い印象を残します。組織は少しもろく、口に入れるとほろりと崩れ、なめらかに溶けていく食感も特徴的です。
スティルトン
「英国チーズの王様」と讃えられるスティルトンは、ゴルゴンゾーラと同じく牛乳を原料としますが、そのキャラクターは大きく異なります。ゴルゴンゾーラがクリーミーでとろけるような食感を持つのに対し、スティルトンは比較的組織がしっかりとしており、ほろりとした食感が楽しめます。青カビは内部に均一に広がり、味わいはシャープさよりも、ローストナッツを思わせるような香ばしさと、複雑で奥行きのある旨みが際立ちます。その風格ある味わいは、まさに王の名にふさわしい逸品です。
ゴルゴンゾーラのドルチェとピカンテの違い

ゴルゴンゾーラの世界をさらに探求する上で、避けては通れないのが「ドルチェ」と「ピカンテ」という、二つの主要なタイプの違いです。これは単なる味の強弱ではなく、熟成期間や製法に由来する、明確な個性とキャラクターの違いを意味します。どちらを選ぶかによって、楽しみ方の幅も大きく変わるため、この違いを理解することが、ゴルゴンゾーラを最大限に楽しむための鍵となります。
| タイプ | ドルチェ (Dolce) | ピカンテ (Piccante) |
| 意味 | 甘い、穏やか | 辛い、刺激的 |
| 熟成期間 | 約50日〜 | 約80日〜 |
| 青カビの量 | 少なめ(点在) | 多め(筋状) |
| 味わい | クリーミーでマイルド、ほんのりとした甘み | シャープな塩味と青カビの刺激的な風味 |
| 食感 | ねっとりとして柔らかい | やや硬めで、もろっとした組織 |
| おすすめの食べ方 | フルーツやパンと合わせて、そのまま楽しむ | パスタソースや肉料理のアクセントに |
この二つの違いは、主に熟成期間の長さに起因します。熟成が長くなるほど、青カビの酵素によるたんぱく質や脂肪の分解が進行します。これにより、旨み成分であるアミノ酸や、風味の元となる脂肪酸が多く生成され、よりシャープで複雑な味わいへと変化していくのです。
ドルチェ
「甘口」や「穏やか」を意味するドルチェは、その名の通り、ブルーチーズ初心者の方にも心からおすすめできる、非常にマイルドなタイプです。最低熟成期間は約50日と短めで、青カビの量も控えめ。そのため、ブルーチーズ特有のピリッとした刺激は少なく、ねっとりと舌に絡みつくようなクリーミーな食感と、原料である牛乳本来の優しい甘みが前面に出ています。まずはフレッシュなフルーツや、くるみパンなどと合わせて、その優しい味わいをそのままお楽しみください。
ピカンテ
「辛口」や「刺激的」を意味するピカンテは、最低でも80日以上という長い期間をかけてじっくりと熟成されます。その間に青カビはチーズの隅々まで力強く成長し、見た目にも青緑色の筋がはっきりと現れます。味わいはシャープで塩味が際立ち、青カビの刺激的な風味がガツンと響く、まさに通好みの味わいです。組織はドルチェに比べて水分が抜けてやや硬め。そのままワインと共に楽しむのはもちろん、その力強い風味は加熱することでさらに引き立つため、パスタソースやリゾット、ステーキのソースなどに活用すると、料理全体を格上げしてくれます。
臭くない?特徴的な味と選び方のコツ

ブルーチーズと聞くと、多くの方がまずその「独特の香り」を想像されるかもしれません。この香りは専門的には「熟成香」と呼ばれ、青カビが持つ酵素がチーズの脂肪を分解する過程で生まれる「メチルケトン類」などの揮発性化合物が主な正体です。これはチーズが豊かに美味しく熟成している証であり、多くのチーズ愛好家を虜にする魅力の一つでもあります。
しかしながら、この香りにまだ慣れていない方にとっては、少しハードルが高く感じられるのも事実です。もし「香りが苦手でブルーチーズを敬遠している」のであれば、それは非常にもったいないこと。実は、香りが比較的穏やかで、初心者の方でも美味しく楽しめるブルーチーズはたくさん存在します。香りの穏やかなチーズを選ぶための、実践的なコツは「種類」と「状態」、「温度」の3つを見極めることです。
種類で選ぶ
最も確実な方法は、香りがマイルドな種類を選ぶことです。この記事で繰り返しご紹介しているゴルゴンゾーラの「ドルチェ」は、熟成期間が短く青カビの量が少ないため、香りも味わいも非常に穏やかで、まさに最初の一歩として最適です。
状態を見極める
店頭でカット販売されているチーズを選ぶ際は、その「状態」にも注目してみてください。一般的に、チーズは外皮に近い部分ほど熟成が進み、風味が強くなる傾向があります。可能であれば、カットされたチーズの中心部分を選ぶと、よりマイルドな味わいを楽しめる可能性が高まります。また、カット面が過度に乾燥していたり、逆に水分が滲み出ていたりするものは鮮度が落ちている可能性があるため、しっとりと潤いのあるものを選びましょう。
温度をコントロールする
ブルーチーズは、食べる温度によって香りの感じ方が劇的に変わります。冷蔵庫から出してすぐの冷たい状態では、香りの元となる成分が揮発しにくいため、香りは非常に穏やかに感じられます。まずはこの状態で一口試してみてください。そして、少しずつ常温に近づけていくと、閉じていた香りがゆっくりと花開き、ミルクの甘みやナッツのような香ばしさなど、複雑で豊かな風味が現れてきます。ご自身のペースで温度を調整しながら、心地よいと感じるポイントを探していくのも、ブルーチーズとの上手な付き合い方の一つです。
ゴルゴンゾーラとブルーチーズの違いを活かす食べ方
初心者におすすめの美味しい食べ方

ゴルゴンゾーラをはじめとするブルーチーズの個性的で奥深い世界へようこそ。もし、その独特の風味に少しだけ不安を感じているなら、ご安心ください。いくつかの簡単な工夫で、ブルーチーズは驚くほど親しみやすくなり、きっとその真の魅力に気づくことができるはずです。初心者の方がブルーチーズと素晴らしい出会いを果たすための、実践的なアプローチをいくつかご紹介します。
最も効果的で簡単な方法の一つが、チーズに熱を加えることです。ブルーチーズ特有のシャープな香りの元となる揮発性成分は、加熱することで穏やかになります。同時に、アミノ酸由来の旨み成分(グルタミン酸など)と塩味が凝縮され、料理全体に圧倒的なコクと深みを与えてくれます。例えば、いつものカルボナーラソースに少量(1人前で10g程度)のゴルゴンゾーラを溶かし込むだけで、一瞬にしてレストランで供されるような本格的で濃厚な一皿に昇華します。また、シンプルにトーストしたパンに乗せて焼くだけでも、香ばしさととろける食感が加わり、素晴らしい軽食になります。
もう一つの王道は、甘みのある食材と組み合わせるというアプローチです。これは「対比のペアリング」と呼ばれる、料理の基本的な考え方に基づいています。ブルーチーズが持つはっきりとした塩味と、フルーツやはちみつが持つ豊かな甘みが口の中で出会うことで、互いの角が取れてまろやかになり、「甘じょっぱい」という抗いがたい魅力が生まれます。この味の対比効果は、チーズの塩味を穏やかに感じさせ、非常に食べやすくしてくれます。
まずは、この記事で紹介したマイルドな「ゴルゴンゾーラ・ドルチェ」を少量から試してみてください。バゲットや素朴なクラッカーに薄く塗り広げたり、グリーンサラダに少量だけ崩してアクセントとして加えたりするだけでも、そのクリーミーな食感と優しい旨みを十分に感じ取ることができるでしょう。
そのまま?はちみつ?定番の組み合わせ

ブルーチーズの楽しみ方はまさに無限大ですが、その中でも特に愛され、その魅力を最大限に引き出してくれる、確立された定番の組み合わせが存在します。これらのペアリングを試すことで、ブルーチーズが持つ多面的な味わいをより深く理解することができます。
そのまま食べる
何よりもまず試していただきたいのが、チーズそのものの味をじっくりと堪能するために、そのまま召し上がることです。特に「ピカンテ」のような長期熟成タイプの力強い風味は、ほんの少量でもその複雑な味わいと、熟成によって生まれた豊かな香りのグラデーションを存分に楽しめます。ここで非常に大切なポイントが温度です。食べる15〜30分ほど前に冷蔵庫から出し、室温に馴染ませてください。チーズに含まれる脂肪分が少し緩むことで、冷たい状態では閉じ込められていた香り成分が揮発し、本来の風味が花開きます。
はちみつとの組み合わせ
ブルーチーズと聞いて多くの人が思い浮かべるのが、はちみつとの黄金の組み合わせではないでしょうか。これは、チーズの塩味とはちみつの甘みが互いを引き立て合う、味覚の科学に基づいた最高のペアリングです。特に、花の香りが穏やかでクセのないアカシアのはちみつは、チーズ本来の繊細な風味を邪魔することなく、全体を優しく包み込みます。力強いピカンテには、栗の花のような少し個性のあるはちみつを合わせるのも面白いでしょう。
フルーツやナッツとの相性
甘みと酸味を兼ね備えたフルーツとの相性も抜群です。特に、旬のいちじくや熟した洋梨、皮ごと食べられるブドウなどが持つ瑞々しい果汁と上品な甘みは、ブルーチーズの塩気と濃厚な風味を爽やかにリフレッシュしてくれます。また、くるみやアーモンドといったナッツ類を軽くローストして添えると、その香ばしい風味とカリッとした食感が素晴らしいアクセントとなり、味わいの多層性をさらに高めてくれます。
ワインと楽しむ簡単レシピ

ブルーチーズは、ワインと共に楽しむことで、その魅力がさらに深く、そして華やかに開花します。家庭で手軽に作れる簡単なレシピと、それぞれの料理を格上げするワインペアリングの基本をご紹介します。ブルーチーズは、たんぱく質やカルシウムも豊富な発酵食品です。
参考資料:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
ゴルゴンゾーラとくるみのクロスティーニ
薄切り(1cm厚程度)にしたバゲットをオーブントースターで軽く黄金色になるまで焼き、熱いうちにゴルゴンゾーラ・ドルチェを塗ります。その上に粗く砕いたくるみを散らし、お好みでアカシアのはちみつを少量かければ、5分で完成する、簡単でおしゃれな前菜です。
このレシピには、ドルチェのクリーミーで穏やかな味わいを引き立てる、果実味豊かな辛口の白ワイン(例えば、ソーヴィニヨン・ブラン)や、イタリアのスパークリングワインであるプロセッコが素晴らしい相性を見せます。
鶏肉のゴルゴンゾーラソース
フライパンで皮目をパリッと焼いた鶏もも肉を取り出し、そのフライパンに残った旨みのある脂に、生クリーム(100ml)とゴルゴンゾーラ・ピカンテ(20-30g)を加えて弱火で煮詰めます。チーズが溶けてとろみがついたら、塩胡椒で味を調え、鶏肉にかけるだけで本格的なメインディッシュが完成します。
ピカンテの持つしっかりとした塩味と熟成香には、その力強さに負けない、コクのある赤ワインが最適です。果実味が豊かで程よいタンニンを持つメルローやシラー種のワインが、ソースの濃厚な味わいと見事に調和します。
また、ブルーチーズはデザートワインとの相性が格別であることも忘れてはなりません。フランスのソーテルヌに代表される貴腐ワインや、ポルトガルのポートワインのような極甘口のワインと、塩気の強いピカンテを合わせると、互いの味を高め合う至福のマリアージュが生まれます。これは、食後のチーズとして、またはそれ自体が一つのデザートとして完結する、贅沢な楽しみ方です。
【総まとめ】ゴルゴンゾーラとブルーチーズの違い
- ブルーチーズは青カビで熟成させるチーズの総称です
- ゴルゴンゾーラはブルーチーズという大きな分類の中の一つです
- 青カビチーズとブルーチーズは基本的に同じものを指します
- 世界三大ブルーチーズはゴルゴンゾーラ、ロックフォール、スティルトン
- ゴルゴンゾーラはイタリア産で原料は牛乳です
- ロックフォールはフランス産で原料は羊乳です
- スティルトンはイギリス産で原料は牛乳です
- ゴルゴンゾーラにはドルチェとピカンテの2種類があります
- ドルチェは甘口でクリーミー、初心者におすすめです
- ピカンテは辛口でシャープな風味、料理への使用に適しています
- ブルーチーズの香りが苦手な方はドルチェから試すと良いでしょう
- 熱を加えるとブルーチーズの風味はマイルドになります
- はちみつやフルーツと合わせると塩味が和らぎ食べやすくなります
- そのまま食べることでチーズ本来の複雑な味わいを楽しめます
- くるみなどのナッツ類は食感と風味のアクセントになります
